ボーカロイド調教に必要な音楽理論V 拍子とテンポ編

音楽理論編Tでは音程について、音楽理論編Uでは音符・休符についてまとめましたが、ここでは基礎中の基礎理論最終段階「拍子とテンポ」についてまとめます。
とりあえずこれらの基礎理論を理解できれば、単音編集のボカロ調教は可能です。
コーラスなどが絡んでくるとコード理論なども必要になりますが、それらはまた別の機会にまとめたいと思います。

拍子について

拍子(time[英]、metor[英])とは、ある決まった数の拍が集まってリズムの基礎となるものを言う。
普通、多くの場合は、強拍と弱拍の規則的な組み合わせによって反復され、この強拍と弱拍の組み合わせ方によって各種の拍子が作られる。
(遠藤三郎著 「新しい形式による楽典 音楽用語の知識」より引用)

例えば現代音楽で一番よく使われている拍子が「4/4拍子」です。
これは、「一小節の中に4分音符が4個入ってます。これがこの曲の基礎リズムですよ〜」という意味です。
これが3/4拍子なら「一小節の中に4分音符が3個入っています」、6/8拍子なら「一小節の中に8分音符が6個入っています」という意味になるのです。
現代音楽でよく使われる代表的な拍子を挙げておきましょう。

そのT 4/4拍子(4分音符系拍子その1)
4/4

音楽のあらゆるジャンルにおいて最もよく使われている拍子です。人間の耳に一番スムーズに入ってくる拍子でもあります。
4/4拍子は一小節の中で「4分音符」が「4つ」鳴る基礎リズムです

4/4拍子の曲・例

試聴プレーヤー

(「星姫」 音々P)

ちなみに関連する拍子として2/4拍子(一小節の中に4分音符が2つ)がありますが、普通に聞いている分には4/4拍子とあまり変わりなく人間の耳に入ってきます。
( 2/4 + 2/4 = 4/4 となるため。4/4拍子を2分割したものが2/4拍子と捉えてもらって差し支えありません。)

そのU 3/4拍子(4分音符系拍子その2)
3/4

ワルツに使われる拍子です。この拍子も比較的人間の耳にスムーズに入ってきます。
3/4拍子は一小節の中で「4分音符」が「3つ」鳴る基礎リズムです。
わかりやすいリズムの取り方として「ズン・チャッ・チャー」と覚えておくと便利です

3/4拍子の曲・例

試聴プレーヤー

(「Rotten Lilies」 音々P)

3/4拍子に関連する拍子として6/4拍子(一小節の中に4分音符が6つ)があります。
これは基本的に「 3/4拍子 + 3/4拍子 」と捉えます。
(※但し、曲によっては2/4拍子+4/4拍子もしくは4/4拍子+2/4拍子と、変拍子的な捉え方をしなければならない場合もあります。変拍子については後述します。)

そのV 6/8拍子(8分音符系拍子)
6/8

6/8拍子は一小節の中で「8分音符」が「6つ」鳴る基礎リズムです。
通常、「○/4拍子」の4分音符系統の拍子の場合、8分音符のリズムを取る場合は

4拍子

と、「8分音符2つずつ」を意識してリズムを取りますが、「○/8拍子」の8分音符系統の拍子の場合は

6/8拍子

と、「8分音符3つずつ」を意識して、大きめにリズムを取るのがポイントです。

6/8拍子の曲・例

試聴プレーヤー

(「あおいとりのうた」 音々P)

他にも関連する8分音符系統の拍子として3/8拍子や9/8拍子、12/8拍子などがありますが、基本のリズムの取り方は上記と一緒です。

そのW 5/4拍子、変拍子
5/4拍子

5/4拍子は一小節の中で「4分音符」が「5つ」鳴る基礎リズムです。
5/4拍子はジャズ曲の「Take Five」に使われている拍子で、変拍子曲でよく使われる拍子です。 ちなみに変拍子とは一小節〜数小節単位で拍子が変わることを言います。
普通に4/4拍子曲や6/8拍子曲のリズムのつもりで聞いていると「んっ?あれっ?小節の切れ目ドコー?」と、つっかかって転んだ感覚に陥りますので注意が必要な拍子群、それが変拍子系統の拍子です。
(裏を返せば曲の流れを変えて聞き手の意表を突くのに向いた拍子でもあります。)

変拍子系統の拍子はプログレッシブロックで非常に顕著な拍子ですが(プログレでは5/8拍子や7/8拍子など、8分音符系統の変拍子がよく使われます)、慣れないとリズムの取り方がかなり難しいです。
そこでリズムの取り方として、「3/4拍子+2/4拍子」もしくは「2/4拍子+3/4拍子」という風に、わかりやすいリズムに分割して捉えることが推奨されます。
(上で紹介したTake Fiveは「3/4拍子+2/4拍子」で取るとわかりやすいです。)
これらも8分音符系統の拍子と同じく、「大きめにリズムを取る」ことを意識します。
ちなみに変拍子の判定方法ですが、分子の数が2もしくは3の数字で割り切れないものはほぼ変拍子に分類されると覚えておくといいと思います。ちょっと乱暴ではありますけどネ。

他にも2分音符系統の拍子や16分音符系統の拍子などもありますが、基本的な法則性は上に挙げたものと一緒です。
これらの拍子は主にクラシックで使われるものですので、拍子についてはとりあえず以上のものを把握しておけば現代音楽では十分間に合うでしょう。

テンポについて

一般的に

bpm

等と表記されます。
これは「一分間に4分音符が120回鳴る速さ」ということを表現しています。 この数字が84なら「1分間に4分音符が84回鳴る速さ」です。
ちなみにボーカロイドエディタでは、bpm値は「20〜300」間の値で設定できます。
余談ですが、60bpmの速さは時計の秒針の速さと同じです。
なので、60bpmの場合、4分音符の長さは「1秒」です。
120bpmの場合、60bpmの2倍速くなりますので、4分音符の長さは半分になって「0.5秒」となります。
下の図はDAW上で60bpmの時の4分音符の長さ(上)、120bpm時の4分音符の長さ(下)を比較したものです。
ちなみにこの波形は初音ミクで「あ〜」と歌わせた時の波形です。(画像クリックで別窓拡大表示)

長さ比較

このような感じで、テンポが変わると音符の長さが変わる、ということがおわかりいただけると思います。

さて、ここでちょっと面白い音楽の法則を紹介しましょう。
上の例を見てわかるように、同じ4分音符でも、長さが違いますね?
音楽理論編U「音符の種類及び休符の種類(長さ)」の項目で、「音符・休符の長さは相対的なものであり、実際に演奏する長さは曲のテンポによって変わります。」と書きました。
それがこういうことなのです。
それを踏まえて、更に突っ込んだ話をしましょう。

・60bpmの場合、4分音符の長さは「1秒」である

・4分音符の1/2の長さの音符は「8分音符」である

・つまり60bpmにおいては、8分音符の長さは「1秒の1/2=0.5秒」となる

・あれ?これって120bpmの4分音符の長さと同じじゃね?

なんとテンポと音符の長さについてはこんな数学的な法則があります。
この法則、ボカロ調教で使えるのでは?

ということで、次回はこの「テンポ設定とボカロ調教テクニック」についてお話したいと思います。


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