ボーカロイド調教に必要な音楽理論U 音符編

前項では「音程」に関する知識を挙げましたが、ここでは音程と共に重要な要素「音符と休符」についてまとめたいと思います。

音符の定義

音符(note[英])とは、形で音の長さを表わし、譜表上の位置で高さを表わす記号をいう。
休符(rest[英],Pause[独])とは、音が休止している長さを表わす記号をいう。
※音符と休符が表わす長さとは,長さの割合(比較)である。これを音価(time value[英])という。実際に奏する長さは、曲の速さによって異なる。
(遠藤三郎著 「新しい形式による楽典 音楽用語の知識」より引用)

理論書では小難しいことを言っていますが、要は音の長さを決定する要素を音符と呼んでいますよ、というお話です。
前項でまとめた「音程」が音の上下を決定する「縦軸」要素なら、 「音符」は時間の進行に伴う長さの変化を決定する「横軸」要素になります。

【音程と音符の関係イメージ図】

音符の概念イメージ図
音符及び休符の種類(長さ)

4分音符、8分音符などの法則性についてまとめてみましょう。
音楽理論では全音符(まるごと一小節分の長さである名称)の長さを「1」と設定し、1/2、1/4、1/8の長さ…と、分母を倍々にしてゆきます。
そして全音符(全休符)以外は(分母の数字)分音符(休符)という名称をつけるという決まりがあります。
上の引用でも述べているように、ここで紹介する音符・休符の長さは相対的なものであり、実際に演奏する長さは曲のテンポによって変わります。

記号 名称 解説
全音符全休符 全音符(全休符) まるごと一小節分の長さ
2分音符2分休符 2分音符(2分休符) 全音符(休符)の1/2の長さ
4分音符4分休符 4分音符(4分休符) 全音符(休符)の1/4の長さ
8分音符8分休符 8分音符(8分休符) 全音符(休符)の1/8の長さ
16分音符16分休符 16分音符(16分休符) 全音符(休符)の1/16の長さ
32分音符32分休符 32分音符(32分休符) 全音符(休符)の1/832の長さ
64分音符64分休符 64分音符(64分休符) 全音符(休符)の1/64の長さ

(以下略)

視覚情報としてわかりやすいように、ボーカロイドエディタのピアノロール画面で各音符の長さの比較をしてみましょう。
画像クリックで別窓拡大表示します。

ピアノロール画面

音符とは、このような法則で成り立っています。
ボーカロイドエディタでは64分音符の長さまで編集可能です。
画面左上にあるLEGINTHやQUANTIZEの設定をOFFにするとそれ以上に短い長さでの編集も可能ですが、余程のことがなければ64分音符単位での編集でもあまり問題はありません。

符点について

その音符の1/2の長さを付加したことを表わす記号。
例えば4分音符に符点がついた状態なら、4分音符の長さに8分音符の長さが付加されたことを表わします。
符点の長さについてまとめたものを表にしてみましょう。

記号 名称 解説
符点全音符符点全休符 符点全音符(符点全休符) plusplus
全音符(休符)+2分音符(休符)
符点2分音符符点2分休符 符点2分音符(符点2分休符) plusplus
2分音符(休符)+4分音符(休符)
符点4分音符符点4分休符 符点4分音符(符点4分休符) plusplus
4分音符(休符)+8分音符(休符)
符点8分音符符点8分休符 符点8分音符(符点8分休符) plusplus
8分音符(休符)+16分音符(休符)
符点16分音符符点16分休符 符点16分音符(符点16分休符) plusplus
16分音符(休符)+32分音符(休符)

(以下略)

視覚情報としてわかりやすいように、ボーカロイドエディタのピアノロール画面で各符点音符の長さの比較をしてみましょう。
緑色の部分が「符点」にあたる部分で、青色の部分の半分の長さになっていることがおわかりいただけると思います。
画像クリックで別窓拡大表示します。

ピアノロール画面

符点音符とは、このような法則で成り立っています。

連符について

連符とは、特別な形に分割した音符群を言う。
(遠藤三郎著 「新しい形式による楽典 音楽用語の知識」より引用)

例えば4分音符については、8分音符x2の長さと一緒、もしくは16分音符x4の長さと一緒という法則があります。
(計算例1)1/8 × 2 = 2/8 = 1/4 (全音符の1/4の長さ=4分音符)
(計算例2)1/16 × 4 = 4/16 = 1/4 (全音符以下略)

じゃあ、この4分音符を均等に3分割したいんだけど3分音符なんてないよね!?何これ困った!って時に活躍するのが「連符」という概念です。
現代音楽では主に4分音符を3分割した「3連符」というものが使われます。
主にジャズやブルースなどでよく聞く事の出来るリズムですが、ポップスなどでも幅広く使われているリズムです。
「まわるまわるよ時代はまわる〜」のフレーズで有名な、中島みゆきの「時代」などは非常にわかりやすい、顕著な3連符曲です。
譜面に書くときはテンポなどと一緒に下の図のような補足を書く事で、「この曲は最初から最後まで4分音符を3分割したリズムで行きますよ〜」という宣言になります。

3連符宣言

もちろんこの数字は3じゃなくても5でも7でも割り切れない数字なら何でもいいのですが、ボーカロイドエディタでは3連符しか対応してないので、 とりあえず3連符だけ覚えておけばボーカロイド調教には差しさわりありません。
ボーカロイドエディタで3連符宣言を出すには、下記手順を踏みます。(画像はVOCALOID3のものです。VOCALOID2でも同じ手順を踏みます。)

@ トランスポートパネルにあるQUANTIZE下の▼をクリック

エディタ3連符宣言

A 3連符をクリックしてチェックを入れる

エディタ3連符宣言2

LEGINTHを3連符単位に設定したい場合も同様の手順を踏みます。
1/4や1/8などはお好みで設定して下さい。細かく調教したい場合は1/64をオススメします。

まとめ

音楽は「音程」と「音符」と「休符」、これらの3つの要素によって成り立っています。
この3要素を複雑に組み合わせることによって、様々な音楽が生まれます。

次回はボーカロイド調教において最低限必要な音楽理論知識の最終段階にあたる「拍子とテンポ」についてまとめてゆきます。


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